徳島のIT業界の変遷と魅力ある徳島のIT企業特徴。
そして、徳島のITの未来(前編)
一般社団法人 徳島県情報産業協会 会長
株式会社サンエックス情報システム 代表取締役 外山 邦夫 氏
徳島には、どのようなIT企業を育む土壌があるのか―。
世界初のスポーツドリンクであるポカリスエット、世界初のレトルトカレーの開発など世の中になかったような製品を生み出してきた大塚ホールディングス―。
世界で初めて、青色発光ダイオード(LED)の製品化に成功した日亜化学工業株式会社―。
日本語ワープロソフトの代名詞でもある「一太郎」を開発し、日本のソフトウェア開発を牽引してきた株式会社ジャストシステムー。
徳島では、豊かな発想力と着眼点を持ち、時には世界を「あっ」と驚かせる開発を成功する会社が誕生する。
徳島の企業と長く向き合ってきた一般社団法人 徳島県情報産業協会 会長 外山 邦夫 氏に、徳島の企業や徳島のIT業界の歴史、そして今後の徳島のITの未来についてインタビューをした。
―― 外山さんはいつからITに関わり始めましたか?
私がITに関わるようになったのは1970年ごろです。元々、新卒で入社した大手製紙会社で新しく『情報課』が新設されるということを聞き、新しいことに挑戦してみたいと考え、異動の希望を出しました。そもそも当時は、コンピュータなるものを見る機会もなく、何をするのかもはっきりわかっていませんでしたが、元々、工業系の勉強をしていたこともあり、「これは、面白そうだ」と、直感的に思ったんですよね。でも、結局、その会社では異動の希望は叶わなかったのですが、徳島で2番目に出来たIT企業である徳島コンピュータセンターでプログラマの募集が始まったこともあり、応募し、ご縁をいただくことになりました。
私が入社した頃、オフコンと呼ばれる大型コンピュータが登場し、オフコンで請求書、販売管理、給与計算などのシステムを開発していました。当時はメーカーから技術指導を受けることができたので、技術者は現場の仕事をしながら、スキルを向上する機会に恵まれました。徳島で初のプログラマが生まれた世代が私たちだったのだと思います。
当時、プログラミングができる人材はほとんどいなかったこともあり、仕事は次々と舞い込んできました。その時のプログラマたちが、それぞれ独立して代表となり、システム会社を設立し、現在も徳島のIT業界を牽引しています。
私も30歳の頃からフリーのプログラマとなり、35歳で有限会社サンエックス情報システム(現:株式会社サンエックス情報システム)を起ち上げ、現在に至ります。
―― 徳島県のIT企業の特徴を教えて下さい。
徳島には、大塚製薬工場を始めとする大塚グループや日亜化学工業、製紙会社の工場部門など大手製造企業などが複数存在します。また、中小企業ももちろん多く、世界規模の大手企業から中小企業まで幅広い企業規模に対応する技術力、開発力を磨いてきました。また、弊社もそうですが、少人数のチームでコンサルから提案、開発、導入、運営、保守まで一気通貫で行うシステム会社が多く、エンジニア自身も一気通貫でコンサルから保守までの経験を積んでいる人材が多いということも徳島のシステム会社の特徴の一つかもしれませんね。そのため、徳島在住のエンジニアは幅広い領域の技術を習得していて、レベルはとても高いと思います。
都会で働いていたエンジニアがUターン、Iターンで徳島のシステム会社に勤務すると、そのレベルの高さに驚くことが多いようです。徳島のシステム会社で勤務すれば、どこに出ても恥ずかしくない、高いレベルのシステムエンジニア、端的に言えば、一人でも独立起業できるレベルに成長することができるのではないでしょうか。
―― これからの徳島のIT企業はどのような方向性を目指しているのですか?
日本はもちろんそうですが、徳島も人口減少の波に晒されていることは事実です。ただ、徳島には「高い技術力を持つエンジニア」がいることは強みとなり、今後それが更に武器になっていくと考えています。
例えば、東京などのシステム開発の依頼をもっと積極的に受けていくことなども一つ面白い取り組みだと考えています。徳島は、土地も安く、企業の固定費も安いので、東京の価格と比較すると単価は圧倒的に安いでしょう。また、東京であれば大きな企業が多いので中小企業はパッケージシステムを使用し、自社用のシステム開発を行うことが難しいかもしれませんが、ニッチな業界や中小企業では自社用のオリジナルシステムが必要だと思います。
まだまだパッケージ化、クラウド化されない、でも必要不可欠な業務用システムがあり、またそのシステムを開発することで、その業界が、その企業が飛躍的に成長するチャンスもあるかもしれません。私たちはそんなお手伝いをすることができる力を持っていると思っています。
―― 外山さんが会長を務められている徳島県情報産業協会にも様々な挑戦をする、魅力的な徳島の地場IT企業があると聞いています。まずは、徳島県情報産業協会についてお教えください。
徳島県情報産業協会は設立から30年になります。2017年の現在、正会員は32社となっています。主にシステムインテグレータ系の会社が協会に所属しており、技術的な勉強会やセミナーなどを行っています。時には、徳島県が行っている企業間のビジネスマッチングに参加することもあります。
また、徳島だけにとどまらずの情報産業協会が協力して、四国4県を一つのチームとして活動し、優れた技術や製品を全国へ広げていく活動も初めています。私も参加している取り組みの一つとして「四国IT農援隊」などITを活用した営農支援もあります。四国といえば農業ですし、私たちが築いてきたIT技術が地域に還元し、農地の規模拡大に伴う作業効率向上、6次産業化などによる商品開発及び販路開拓などの課題に対し、ITによるソリューション提供などを行い、農業においても企業的経営が行えるよう、四国地域らしい農業の産業化に結びつけたいと考えています。
四国という地域だからこそ、農業を含め、ITの技術を活用し、大きな革新を生み出せる可能性を秘めているのではないでしょうか。
ITを活用し、農業の効率化を通して、農業市場の活性化を目指す。
後編では、より徳島の地場IT企業の特徴やサービス、新たな取組を詳しくご紹介いただきます。
そして、これからの徳島のITの未来への展望も語っていただきます。