徳島のIT業界の変遷と魅力ある徳島のIT企業特徴。
そして、徳島のITの未来(後編)

前編では、徳島県情報産業協会 会長 外山 邦夫 氏に徳島のITの歴史やこれから徳島のIT企業が目指す姿、徳島のIT企業だからこそできる取り組みなどをお聞きしました。
後編では、より詳細な徳島のIT企業の特徴や現在取り組んでいるIT系の開発について、そして徳島のITの未来について語って頂きました。

―― 協会には、どのような技術を持つ企業があるのでしょうか?

自社開発したVR技術を、デジタルサイネージに組み込んで訴求力の高いコンテンツを企画するなど、新たな技術開発に意欲的な会社があります。最近ですと、ドローンを使った技術開発にも力を入れているそうです。

例えば、災害時には道路が寸断されてしまうエリアをドローンで空撮し復旧計画を立てることに役立てたり、ダムのような人が近づけない大型建設物の映像を撮影し異常の早期発見などにつなげます。安全にドローンを稼働できる地方だからこそ、ドローンを飛ばして豊富な検証データを取ることができます。徳島ならではの地の利を生かした開発と言えるでしょう。
徳島県の那賀町という地域は、小型無人機ドローンの活用で県版地方創生特区に認定されるなど、徳島県としてもドローン活用で生まれるサービス開発を期待しているようです。

また、もともと徳島は林業の盛んだった地域なので、林業に特化したシステムを開発し、全国の顧客に長年愛用されている企業や、農業分野で生産管理や効率性を高めるためのシステム開発から出発し、今では植物工場のシステムを開発しているエンジニアもいます。

ドローンを活用したIT技術
ドローンを活用したIT技術はまだまだ開発の余地がある。
ドローン特区が設けられ、ドローンの実証実験を行えるのも、徳島ならではの魅力。

―― 徳島県上勝町が行う「葉っぱビジネス」のシステムも徳島の企業が作ったのでしょうか?

その通りです。葉っぱビジネスを支えるネットワークを構築したのも会員企業であり、徳島の地場IT企業です。現場に密着した開発をしたからこそ、ご高齢のユーザーが使用しやすく、かつ市場のスピード感に対応できるシステムを作り上げることができたのだと思います。

大手企業が机上で行うと現場に即していないこと、またそのシステムを使用するためにはユーザーの高い理解力が求められますし、導入後の定期的なメンテナンスや現場へ足を運んでの改善は難しいでしょう。現場を理解する力のある徳島の企業だからこそ開発できたのだと思いますし、地域のために、このビジネスを成功させたいという強い想いもあったのだと思います。

葉っぱビジネス

モミジや南天の葉、花や山菜など、日本料理の飾りに用いられる“つまもの”を栽培・出荷・販売するビジネス。葉っぱビジネスは、書籍化(いろどり おばあちゃんたちの葉っぱビジネス)だけでなく映画化(人生、いろどり)もされ、地方創生の成功事例として注目されるビジネスモデル。今では、葉っぱビジネスは売り上げ約2億6000万円の市場となり、中には1000万円以上を売り上げる農家も存在する。

―― 徳島の企業だからこそ出来た開発なんですね。その他にも、徳島だからこそと思えるようなIT企業をご紹介下さい。

徳島のIT企業には、企業の情報部門が独立した企業も多くあります。そのため、母体となる企業と緊密に共同してシステム開発ができることも特徴だと思います。
例えば、親会社がガス会社の子会社であるシステム会社も今、面白いサービス開発に着手しているようです。
ガス事業には、検針、保安、そしてガスの配送など各家庭や各施設へ定期的に足を運ぶ必要がありますが、IoTソリューションを利用し、それらの業務の効率化を目指し、実証実験をしているそうです。「LoRaWAN(ローラワン)」というネットワークを活用していることが特徴です。

通常、ネットワークはスピードを重視されますが、「LoRaWAN」のネットワーク速度はあまり速くありませんが、低消費電力で長距離データ通信が可能で、ガスの検針など「即対応」が求められないものであれば、価格を抑え、広範囲な通信が実現し、非常に利用しやすいネットワークとなります。また、「LoRaWAN」は自前で基地局設置ができることも特徴で、今まで通信技術を利用できなかった業界やサービスにも自前で設置できることで、利用が広がると感じます。子ども・年配者の見守り、防災・減災、スマートシティ、環境モニタリングなどにも視野を広げているようで、今後、徳島発のIoTソリューションが広がっていくことも楽しみですね。

―― 徳島にもいろいろなIT企業があるんですね。

そうなんですよ。徳島のIT企業は技術力はあるんですが、広報PR活動はあまり得意ではありません。すごい技術を持っていても、アピールができていないんです(笑)。徳島にある優れたIT企業を、地方への移住や転職を検討するエンジニアの方々や我々に発注をしたいと考えて頂けるような企業にも、今までは私たちを見つけにくかったと思いますが、「Turn Up 徳島」で、徳島のIT企業を集約されることで、発見していただきやすくなることを期待しています。

―― はい、「Turn Up 徳島」で徳島のIT企業だけでなく、徳島の大学の研究機関や徳島でのITエンジニアのグループ、徳島にSO(サテライトオフィス)を出しているIT企業などを紹介し、徳島のITに関わる全般の情報を集約できるサイトにしたいと考えています。

それは、楽しみですね。今ある徳島のIT企業だけでなく、徳島でITに関わる団体や徳島のエンジニアたち、またITを通して徳島に関わっていきたいと思う方々の情報収集の場となり、交流の場となることを期待しています。

―― 「チーム徳島」となってITで徳島を盛り上げることが出来れば、面白いですね。

そうですね。この取り組みから徳島でITの動き活性化することも期待しています。もちろん、私たち情報産業協会もこのプロジェクトには期待していますし、徳島で起業したいエンジニアの方々のサポートも行っていきたいですし、徳島の地場IT企業と一緒にシステム開発を目指したいというSO(サテライトオフィス)や徳島県外の企業と一緒にプロジェクトや開発をできれば、面白いと思っています。

徳島へのUターン、Iターンを希望するエンジニアの方々の移住や転職も登録も楽しみですね。例えば、東京のシステム会社で勤めているけれど、徳島へUターンをしなければならない家庭の事情がある方、また子育て環境に適した地域で働きたいと移住を検討している方、地方で働くことに興味のある方、ぜひ、徳島でエンジニアとして活躍頂きたいと思っています。
「チーム徳島」一丸となって、エンジニアが活躍できる徳島の未来を創っていきたいですね。

眉山から見る徳島の景色
眉山から見る徳島の景色。
徳島市内は仕事や生活に便利な地域ながら海も山も近く、自然も感じることができる働く場所に適した環境―。
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