徳島の中小企業とITのコラボレーションで生まれる徳島発の新サービスで、地方から日本の未来を変える!(後編)

―― 設立から4年。どのようなサービスがリリースされていますか?

すでに公開終了となったものも含め、17種のサービスを開発し提供を行っています。そうした中で、私たちIT企業が独自に考え出すといったアプローチの仕方では、真に社会に必要とされるサービスを見つけ出すことが難しいということも感じました。

そこで、地元・徳島の中小企業さんのご要望やアイデアをいただきながら、レベニューシェアというカタチで新しいサービスの開発にのぞんでいます。レベニューシェアとは、日本語でいうと協業という意味で「一緒にサービスを作って、事業を行っていきましょう」という形式です。受託と違うのは、初期の開発費は無しかギリギリまで抑えて、そのあとの売上げで利益を上げていく、売上からシェアをしていくという形式です。何が良いかというと、開発サイドもそのサービスが利益を上げることができるように考えることはもちろん、一旦作ったら終わりではなく、そのサービスが成長するようにメンテナンスや追加機能を加えていきます。

そうしたなかで話題を集め、順調にシェアを拡大しているサービスが誕生しています。例えば、吉野川タクシーと立ち上げた株式会社電脳交通の事業です。「コールセンター開発」「GPS車輌動態管理」など、数あるタクシー会社さんの配車サービスをひとまとめに行い、かつ平等にお客さんを割り振れるシステムです。

―― 吉野川タクシーの社長でもあり、株式会社電脳交通の社長でもある近藤氏とは、どのようにして出会ったんですか?

元々、シェアリングエコノミーのサービスを一緒に行ってくれるような企業や経営者を探していました。シェアリングエコノミーとはシェア系と言い、物・サービス・場所などを、多くの人と共有・交換して利用する仕組みです。特に、過疎地域など衰退していく地域には非常に合致するサービスで、「地方ならではのシェア系のサービスができないか?」と考えていました。

そんな中、地域の企業家の会で、IT化を模索する近藤氏と巡り会うことができました。お互いやりたいこと、目指したいことが合致していましたし、お互いの存在を探していたような状況で、一気に話がまとまっていきました。

現在、電脳交通は、徳島県内と松山、高松両市の11社と契約を結び、また東日本への営業拠点も開設しています。また、異業種にも参入し、運転手の持つ端末に業務の指示や位置情報、経路案内を送れる配車システムから一部変更した改良版をボイラー製造販売会社と不動産会社に提供するなど、新たな展開を行いながら、事業を拡大しています。

吉野川タクシー・株式会社電脳交通 近藤 氏
徳島だからできるサービスを考え抜いていた二人でからこそ、出会ってすぐに意気投合したという。

―― 素晴らしい展開を見せているのですね!その他には、どのようなサービスをリリースしているのでしょうか。

その他では、株式会社セッションのResQというサービスを開発、提供しています。
ハウストラブル発生時に近隣の専門業者を検索できるアプリで、たとえば水回りのトラブル、害虫の駆除、家事の代行などを行う業者に登録をいただくことで、利用者は近隣の専門業者を近い順に検索することができます。このサービスは、業界内では非常に注目もされており、やり方次第では、全国レベルのサービスに成長することも可能だと思っています。

また、徳島県の自動車部品製造メーカーでもあり、製造機械メーカーの株式会社ヨコタコーポレーションと共に、製造ラインの異常停止を知らせるスマートフォン用アプリも開発しています。

通常、製造機械に不具合が生じた場合、ラインが停止するのですが、ランプが点灯し不具合を知らせてくれます。これを監視するためにラインごとに担当者を一人ずつ配置して表示版を監視しています。益々人手が足りなくなる中で、監視のためにラインごとに人員を配置するのは、なかなか厳しくなっていきます。

今回、開発したアプリは、スマホのカメラでそのランプの点灯を監視し、カメラが点灯した際に、メールで伝えるというシステムです。スマホさえあれば導入できるので、中小企業でも大きな負担なく導入できるシステムです。日本はものづくりの国ですし、製造ラインを持つメーカーはたくさんあります。ヨコタコーポレーションと共に、日本全国のメーカーへ販売することを目指しています。

例えば人手不足もそうですし、地方だからこその課題が、新たなサービスを生み出すきっかけとなっていると思います。

―― 坂東さんが手がけた開発サービスが、次々と全国への広がりを見せているとは、とても楽しみですね!徳島へUターンをした先輩エンジニアとして、ITエンジニアの方が徳島へUIターンを検討する方にアドバイスをお願いします。

徳島でできないことは、なにもないと思いますし、東京にいなければならないことはありません。徳島に帰ってきて不便と思うこともありませんでしたし。まあ、趣味の落語の寄席のイベントはこちらにはあまり多くないことくらいは、不便なことかもしれませんね。(笑)
仲間作りも、ネットですぐに繋がりますし、エンジニア同士ですと、一度も会ったこともないひとでも意気投合できます。

例えば、CFT (Code for Tokushima)の代表としても活動していますが、ぜひ、そんな場にもお越し頂きたいと思います。会に参加してくれているのは県内のIT技術者20人あまりいます。地域の課題などをITのチカラで解決する試みです。ビジネスではできないことを、楽しみながら行っています。例えば、昨年ですと「阿波おどり連」の連の位置を把握するアプリを開発しました。40余りの連が協力してくれて、3000人近くも利用してくれました。

その他にも、ITエンジニアが集まれるようなコミュニティがあるので、ITエンジニアの方は、地域に馴染みやすい土壌もあると思いますよ。CFTに興味のある方は、Facebookから連絡を頂ければ、いつでも会に参加できますので、お気軽にお越しください。

Code For Tokushimaでの会議風景
Code For Tokushimaでの会議風景。
「若手ITエンジニアは、仲間づくりや新しいサービス開発の経験を積む場にも活用して欲しいですね」

―― 坂東さんのように徳島で起業することは可能でしょうか?

起業の場として考えると、徳島はうってつけの地だと思います。
Code For Tokushimaなどでアイデアを出し合う際にも、自治体のほうから、積極的にさまざまな情報を提供してくれますし、徳島県としてもITの活用に積極的です。

ただ、誰もが起業できるという訳ではないと思います。「危機感を持てる人」かつ「サービスを生み出せる人」でなければ、起業は難しいと思います。でも、それさえ持てれば、徳島での起業は比較的成功しやすいと思いますよ。
私もこうやって徳島で活躍していますが、東京でいるとエンジニアとしては中の上くらいだと思いますし、埋もれてしまうと思います。でも、徳島ですと稀少な存在として、いろんな方から必要な存在として求められます。

「こんなアイデアがあるのだけれど、徳島で起業できるだろうか」「協力してくれる企業や団体はあるだろうか」といったことから「事務所はどんなところに借りればいいだろうか」など、起業を考えているIT技術者の方からの相談にもできる範囲でお応えしたいと思っています。

―― 坂東さんは、徳島のITの未来をどのように考えていますか?

徳島に一人でも多くのITエンジニアが集まり、会社を作ってみたい、起業したいという人が増えれば嬉しいですね。私もその応援をしたいと思っています。そして、徳島に、世界をリードするようなIT企業ができることを夢見ています。

かつて、徳島に大きなソフトウェア開発会社があり、全国からたくさんのITエンジニアや人材が集まりました。そんな風に、もう一度、徳島がIT業界をリードするような地域を目指していきたいと思います。そんな可能性のある若手エンジニアの起業をサポートできると良いですね。

株式会社GTラボ 代表取締役社長 坂東 勇気 氏

阿波市市場町出身。1978年10月10日生まれ。
1999年に阿南工業高等専門学校を卒業し、東京に本社を置く自動車関連IT企業大手に入社。
福岡支社、東京本社でソフト開発エンジニアとして勤務したのち、地理情報システム(GIS:Geographic Information System)関連、ソーシャルゲーム関連のIT企業でも活躍。
BtoC向けWebシステム、スマートフォン対応アプリなどの開発を行う(株)テクノモバイルに入社。
徳島事務所内から社内ベンチャー株式会社GTラボの代表となる。

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