渋谷地下街株式会社

インパクト大のコストパフォーマンスと人材レベルの高さ。東京から来た責任者を魅了したつるぎ町で、企業と地域が共に発展することを目指す。

1957年に東京都渋谷区に開業した渋谷地下街を運営する「渋谷地下街株式会社」。
不動産管理のほか、書類・図面・マイクロフィルムなどをデータ化するデジタルイメージング事業を40年以上行っています。
このデジタルイメージング事業を担う拠点として2020年4月、徳島県美馬郡つるぎ町にサテライトオフィスを開設しました。

きっかけはオリンピックの影響による地価の高騰。企業立地フェアへの参加が転機に。

サテライトオフィス開設の少し前から、オリンピックの影響で東京の地価は高騰傾向にありました。当社は「渋谷地下街」の名の通り、本社は東京都渋谷区にあります。東京の中でも中心部に位置することから、オフィスの維持にはかなりのコストがかかります。同時に人材採用も競合が多く苦戦していました。
デジタルイメージング事業の事務所は耐震性の問題もあって退去しなければという状態だったため、渋谷以外の場所に拠点を移そうという話は出ていましたが、関東近辺ではそこまでメリットを感じられる場所は見つかりませんでした。

当社のデジタルイメージング事業はいわゆるスキャニングです。お客様からお預かりした紙の資料などを物理的に運ばなければいけないため、積雪による影響がなく陸路が確保されていることが必要です。また、リスク分散の観点から津波などの影響を受けにくい場所ということも重要視していました。
どのみち東京から離れた場所に拠点を作るなら、これらの条件を満たす場所がいいと考え、全国に範囲を広げて探していたんです。

そんな中、参加した企業立地のフェアで、徳島県「つるぎ町」のご担当者に声をかけてもらったことがきっかけとなりました。

驚愕のコストメリット。東京での駐車場料金でオフィスが借りられる。

徳島県は神山町をはじめ、サテライトオフィスの先進県という印象がありました。
全国屈指のブロードバンド環境であることも魅力でしたし、積雪の心配もない。津波のリスクについては山側の地域を選択することでクリアできました。

つるぎ町役場の方が紹介してくれた物件が、10年ほど前まで診療所として使用されていた今のオフィスでした。
資料の保管もできる二階建て、トラックが横付けできる大きな駐車場付き、という願ってもない物件で、なんとリフォームまでつるぎ町がしてくれると言うんです。信じられますか?

その時には定着できると断言ができなかったので申し訳なく思ってしまって、もし自分たちが退去した後でもオフィスとして利用できるような、ベーシックなレイアウトにしていただきました。

具体的な金額は言えませんが、賃料に関しても非常に大きなインパクトがあった。
当社は東急グループということもあって、サテライトオフィスの設置には親会社の決裁が必要でした。当初は「なぜ徳島県に?」という懸念を抱かれていましたが、それを覆すほどのコストメリットがあることを、数値データを見せることで理解してもらえました。

全く知らない土地でしたが、つるぎ町の手厚いサポートがあり、安心してオフィスを構えることができたと思っています。

生産性の高さは都心よりも上? 徳島県の人材レベルの高さは嬉しい誤算。

採用に関しては、徳島新聞で「つるぎ町に来春 初のサテライトオフィス進出決定 地元採用12人予定」という記事を掲載いただいたことで、直接当社に「渋谷地下街株式会社で働きたい」というお問い合わせを多数いただき、結果的には求人広告を使用せずに人員の確保ができました。

現在のスタッフは20代から60代までと幅広く、全員に共通して言えるのは学習意欲の高さです。新しい仕事が入ってくると自分たちで勉強し、教え合っていつのまにかできるようになっている。コロナの影響もあって増員は難しい中、産休などで一時欠員が出ているのですが、それもカバーしてくれています。
モチベーションが高く意欲的なこともあり、非常に生産性が高い。個人的には東京よりもレベルが高いと感じています。つるぎ町の方は、好奇心旺盛なこともあるからかもしれません。

縁のなかった徳島県。今では地域と一緒に発展したいと思うほど、好きになった。

つるぎ町で所長を、と言われた時には「徳島?!」と驚きましたが、今までそれなりに不便な環境で暮らした経験もあったので、大丈夫かな、と判断しました。
むしろ自分よりも会社の方が心配してくれて、利便性の高いエリアに家を借りてくれました。通勤は車で30分くらいです。都心で暮らしていた頃は満員電車で往復3時間の通勤でしたので、はるかにストレスは少ないと感じます。自分の時間も増えました。

川が美しく、緑の色も深く、星空も美しい。食べ物もおいしくて、自然の中で生きる素晴らしさを知りました。地元の方は「何もない」と言いますが、特別な価値を感じるものばかりです。

つるぎ町の人たちは、よそから来た私にも親しく声をかけてくれます。そして、自分たちの町をとても大切にしている。一緒に働いて、住んでみて、その魅力を実感しています。コロナ禍で東京のスタッフを呼ぶことができず、魅力が十分に伝わらないのが悔しいくらいです。

つるぎ町の中で雇用を作ることができれば、仕事を理由に好きな町から出て行かなければならないという状況が少なくなります。この町のために何かしたい。役場の方はじめ、いろいろな人の親切や自分の町を愛する気持ちに触れて、その思いが大きくなりました。

そのためにはまず事業を大きくし、雇用を生み出すこと。そして同時につるぎ町をアピールしていく。当社の事業とともに地域も発展できるよう、今後も志を持って進めていきたいと思っています。

徳島拠点の設置を機に、東京での営業では、「徳島県のつるぎ町にサテライトオフィスを持つ渋谷地下街です」と紹介もしています。また、つるぎ町が新しく整備するサテライトオフィス用の物件も同時に案内するなど、企業誘致もご協力できればと思っています。

そういったPRも奏功し、渋谷の地下街にオープンしたAIカフェ「AZLM CONNECTED CAFE」に、つるぎ町の特産物をPRするコーナーを設けていただくことができました。私たちも、つるぎ町の地方創生を担っていきたいと思います。

つるぎ町役場 まちづくり戦略課の武田課長(左)と藤井係長(右)。つるぎ町では、豊かな自然と資源を活かした新たなまちづくりを目指すため、企業誘致と共に空き家問題の解消や移住者の受け入れなど、官民一体となりまちづくり全体の戦略立案や実行を行っています。

PAGE TOP