パワハラやセクハラほどのトラブルはないけど、マウンティングと感じられるような発言をされることが続き、心が「モヤっ」とする・・という経験をした方もいらっしゃるのではないでしょうか。「モヤっ」とする気持ちが続けば、心に疲労がたまってしまいます。
より快適な職場環境づくりができるように、マウンティングについての学術研究の論文がありましたので、要約してご紹介させていただきます。
【参考】
『マウンティングエピソードの収集とその分類:隠蔽された格付け争いと女性の傷つき』森 裕子 お茶の水女子大学大学院 人間文化創成科学研究科、石丸 径一郎 お茶の水女子大学基幹研究院
マウンティングの例
マウンティングは日常生活の中でもありふれているといいます。
わかりやすい例だと、テストで良い得点をとったと喜んでいる友人に、自分の方が高得点だと自慢する行動です。人の成功を素直に聞けず、「俺はもっと・・」と張り合ってくる人です。
少し分かりにくいマウンティングもあります。
例えば、化粧の薄い女性がしっかりメイクをしている女性に対して、「メイク上手~、うまく盛れてるね!」と言う発言です。褒めているようにもみえますが、「盛れてる」という言葉を使うことで、美しさは偽りであることを暗に伝えて、貶めています。
このようなマウンティングをされた被害者は「モヤっ」とした気持ちになるのが特徴です。大きく傷つくわけではありませんが、確実にダメージを受けます。しかも、その場を友好的に取り繕う必要があるので気疲れしてしまいます。
加害者には相手を貶めているという加害意識がないことが多く、加害意識がある場合も、アドバイスのような形をとった発言をすることがあります。
例えば、産後、すぐに職場復帰する女性に対して「子どもが3歳になるくらいまではそばにいてあげるほうがいいよ。子どももお母さんがそばにいないとかわいそうだよ」という発言です。
アドバイスの形をとっていますが、相手の事情を軽視し、自分の価値観だけを押し付けています。
このようなマウンティングは、どのように生まれるのでしょうか。
3つの価値観がけん制しあって生まれるマウンティング
論文によるとマウンティングでは、3つの価値観がけん制しあっているといいます。
3つの価値観
「仕事ができること」
「家庭・恋人関係がうまくいっていること」
「男性・女性としての魅力がある(モテる)こと」
上記の3つが、じゃんけんのグー・チョキ・パーのように三すくみになっているというのです。
全てを兼ね備えている人は決して多くないと思います。そのいずれかが欠けていると感じていることを、自慢されたり、指摘されたりすることで、「マウンティングされている」とより感じてしまうこともあるかもしれません。
マウンティングをする人は、どこかに弱みを持ち、その弱みを隠すために、マウンティングをするのかもしれません。
3つの価値観がけん制しあって生まれるマウンティング
マウンティングをされやすい人は、嫉妬されやすい要素を持っていたり、もしくは、おとなしく、謙虚な人、反論しない人、言われたことを鵜呑みにしてしまう人です。
いわゆる「良い人」だと思います。
ですので、少し勇気をもって、「良い人」を辞めてみてもよいかもしれません。
「そういう言われ方をするとちょっと嫌だなって思います」と伝えてみる。嫌なことを言う人とは、あまり一緒にいないようにして、愛想笑いはしない、など嫌だなと思っているときに、肯定的な態度をとらないことで意思表示からスタートするとよいでしょう。
また、マウンティングをされるということは、何かうらやましいと思われている要素があるということでもあります。強く言い返す必要はありませんが、私のことが羨ましいんだな。とか、きっと、マウンティングしなければならない自信のないことがあるのかも、と相手の状況を推測することで、むやみに傷つくことがないことに気づくことも大切です。
逆に自覚なく、人に対して、マウンティングをしてしまっていることもあるかもしれません。ありのまま、思ったことを口に出してしまう傾向にある方は、相手の状況や心情を考え、自慢になっていないのか、相手の気持ちを配慮することを今一度思い出すとよいかもしれません。
「相手に配慮すること」と「相手を配慮しすぎて自分の気持ちを押し殺さないこと」。このバランス感覚が大切だと思います。
お互いが尊重されていると感じることこそが、信頼関係であり、信頼関係があるからこそ、気持ちよく仕事に挑める職場環境になっていきます。いつも心を「モヤっ」とさせられる人のために、仕事を頑張ることは難しいですよね。
働きやすい職場環境は、社員同士によっても作ることができます。
お互いを尊重しあうことで、よい職場環境を作ることを目指してほしいと思います。