株式会社電脳交通

保有台数9台のタクシー会社の若手経営者とITベンチャー社長が生みだしたクラウドシステムに、全国の投資家が注目。大手企業との資本業務提携により、移動サービスの未来をつくる。

IT化で一番に目指したのは、地域に寄り添った心地よいタクシー事業でした。

「ITで会社の経営を再建」という目標はよく耳にしますが、それを成し遂げることは必ずしも容易ではありません。しかし、それに成功し、V字回復どころか業界のあり方を変えるとまで言われている企業が徳島にあります。

その会社は株式会社電脳交通です。開発した「クラウド型タクシー配車システム」は独自性のあるサービスで地域への貢献に繋がるとして「注目の西日本ベンチャー100」に選出されています。導入先は徳島の他にも香川や、愛媛、岡山、福岡、首都圏では埼玉にもあり、全国に広がっています。

「業界の在り方を変える」というのは、同社システムによって「交通の質」を革新的に高めることができると期待されているからです。時代の変化に伴い、タクシー事業は、利用客や社会的な位置づけが変わってきました。対応策は様々ですが同社は「交通の質」を高めることこそが困難な状況に翻弄されない事業づくりを実現すると考えています。そうした模索の中で生まれたのが「クラウド型タクシー配車システム」です。

去る2018年6月には、事業の可能性を広げるためにJapanTaxi株式会社、株式会社ブロードバンドタワー、株式会社NTTドコモの3社とそれぞれ資本業務提携を結びました。JapanTaxiとの提携では、JapanTaxi開発によるソフトウェア・ハードウェアなどを電脳交通が地域に合わせて販売・運用することで、都心・地方を問わず日本全国へ、世界一のタクシー乗車体験を創り上げていくことを目指しています。

具体的には、電脳交通がクラウド型タクシー配車サポートを行う中小規模タクシー会社に対して、「全国タクシー」アプリへの加盟がより手軽で簡単になるような提案・運用や「広告タブレット」(現在、東京都内を中心に展開。お客様が乗車した際にタクシー車内で広告を配信し、決済も可能とする)のハードウェアの販売実施に向け準備を進めています。また、東京のIT企業である株式会社ブロードバンドタワーとの提携では、先端技術をタクシー業界に導入することを目指しています。

例えば、顧客情報や配車データのビッグデータ解析、配車業務でのAI活用、サイバー攻撃対策などの協業実現です。そして、NTTドコモとの提携では、NTTドコモの通信技術等のサポートを受けることで、電脳交通はサービスの安定、充実を図ることができ、さらには、交通弱者といわれる過疎地の高齢者のための移動手段として、タクシーを活用するビジネスモデル構築に向けて協同で挑んでいます。

大手企業との業務提携によってビジネスの進化を加速させ、タクシーサービスにイノベーションを起こす。
大手企業との業務提携によってビジネスの進化を加速させ、タクシーサービスにイノベーションを起こす。

電脳交通の近藤社長が経営する吉野川タクシーでは「お客さまに寄り添うイノベーション」をテーマに様々なサービスが誕生しました。

徳島で唯一の外国語通訳サービス

全ての車両に30ヶ国以上の言語に対応した、多言語通訳システムを配備しています。徳島県へ旅行に来て下さった外国人観光客により快適な移動空間を届けることができます。

徳島タクシー業界初、妊産婦送迎サービス

ヘルパーの資格を持つ専任ドライバーがお客さまを予めご指定された病院へ送迎します。出産時の移動に対する不安を解消します。

キッズタクシー

忙しいお母さんお父さんたちに向けた子育て支援サービスです。玄関まで安心安全に大切なお子様を送り届け、しかも低コストで利用できます。

お客さまの喜びを増やすことは、地方の中小タクシー会社のお客さまを増やし、経営を支援することにもなります。同社の最高技術責任者としてシステムを開発した坂東氏は言います。「ITは誰かが儲けて代わりの誰かが切り捨てられるテクノロジーではなく、万人が利益を享受できるもの。社長は渋谷系ベンチャーのような尖った企画を考えながら、タクシー事業者としてのハートを持っていた。だからこそ「既存の事業者様」にとっても価値の高いサービスを生み出すことができた。」

近藤社長(左)最高技術責任者坂東氏(右)
32歳(2018年7月取材時)の若手経営者の近藤社長(左)と、株式会社GTラボの代表でもある最高技術責任者坂東氏(右)。

タクシーを走らせながら地域から必要とされていることを感じた。だからこそ、生き残るために進化しなければならなかった。

電脳交通創業の契機となったのは、祖父から「吉野川タクシー有限会社」の経営を引き継いだことでした。体調不良のため会社の清算を検討していた祖父と、情熱を燃やせる「何か」を探していた想いが合致し、近藤社長が誕生しました。

とはいえ、全て未経験からのスタートでした。まずはタクシードライバーとして勤務を始めました。タクシーを走らせながら公共交通の発達していない地方ではタクシーが重要な交通機関であることを実感する一方、業界の特殊な文化にも突き当たりました。

良き伝統を残しつつも、課題をクリアするための経営努力に取り組む中で、ITは有力なツールとなりました。短期間で再建を果たした吉野川タクシーの成功ノウハウが詰め込まれ、全国の小規模タクシー会社の業務効率化を実現できるサービスが「クラウド型タクシー配車システム」と「クラウド型タクシーコールセンター」です。

「クラウド型配車システム」は、クラウド上で車両を一括管理することによりタクシー事業者の配車業務を効率化し、タクシー車両に取り付けられたタブレット上の地図情報等により運行をサポートしています。

「クラウド型コールセンター」は、タクシー事業者それぞれの事情にあわせながら、当社の配車システムを熟知したオペレーターによる効率的な配車を導入直後から実現し、乗務員、そして乗車されるお客様の満足度を高めながら、配車業務をアウトソーシングすることにより経営コストを削減することができます。

そして、特にこだわったのは、顧客データの活用です。地域に密着したタクシー会社にとっては顧客のパーソナルデータは、心地よくタクシーをご利用いただくための重要な財産です。例えば、「家の中までお呼び出しに行く必要あり」「荷物をよく忘れるのでお降りの際に一声かける」。このような情報もシステムに格納し、必要に応じてドライバーに伝達しています。

クラウド型タクシー配車システム クラウド型タクシーコールセンター
従来のように高価な無線がなくても、ネット環境さえあれば導入できます。
将来は発展途上国への展開も考えているそうです。

重要性が改めて見直されているタクシー事業。電脳交通は、業務ノウハウとIT技術で、地方における移動サービスの未来を創造しようとしています。

Turn Up こぼれ話

電脳交通の出勤はフレックス。月160時間勤務を自分で割り振って勤務します。いかにもIT企業!と思ったらそうではないそうです。元々がタクシー事業者なのでドライバーがフレックス勤務、その形態に倣っているそうです。

面白い福利厚生もあります。社員には毎月10,000円のタクシーチケットが支給されますので、金額内でタクシーに乗り放題です!タクシーを利用することで、その良さや課題を発見しサービス向上につなげるための取り組みです。

電脳交通
メジャーリーガーを目指していたという近藤社長。お揃いのパーカーを作るなど、社員一丸となって全員野球が出来るような組織づくりをしています。

会社概要

設立
2015年12月17日
資本金
1億6653万1152円(資本準備金を含む)
売上
非公開
従業員数
26名
事業概要
タクシー会社の配車業務受託運営サービス
タクシー配車システム開発・提供
住所
<本社>〒770-0000 徳島市川内町平石若宮8-6
<幸町オフォス>〒770-0847 徳島県徳島市幸町3丁目101
アクセス
<本社>
・JR徳島駅より自動車で約15分
・徳島空港より自動車で約15分
<幸町オフォス>
・JR徳島駅より徒歩で11分
・徳島空港より自動車で約30分
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