株式会社アルボレックス

創業100周年の老舗企業が挑むのは、ITによる生産性向上とその先にある「製造しやすい現場」づくり。

2021年に創業100周年を迎えた、徳島市津田海岸町にある「株式会社アルボレックス」。主に住宅の建具や玄関収納をはじめとする木質系の内装用部材などを製造しています。
オーダーへの対応に加え、自社のオリジナル商品を製造・提案できることを大きな強みとしており、国内トップクラスの住宅メーカーや建材メーカー、大型工務店(パワービルダー)との取引実績を持っています。

「強い者、賢い者が生き残るのではない。変化できる者が生き残るのだ」というダーウィンの言葉のように、社会の変化に対応することが生き残る術だと語る社長の方針のもと、近年では製造現場のシステム化に力を入れています。

強固な地盤を築く老舗企業が進めている「製造現場のシステム化」とはどのようなものなのか、生産技術部 業務システム課の課長代理である、中山啓司氏にお話しをお伺いしました。

新しいやり方やシステムの導入には、実際に使う現場社員の理解が必要不可欠です。

まずは製造現場の各部署にPCを設置し、工程をデータで管理するところからスタートしました。
IT企業などから見ると考えられないかもしれませんが、製造現場の世界では電子化の進んでいないところもまだ多いんです。

弊社も以前は、紙の図面を持って寸法を照合するなど、検査の工程には全て紙が用いられていました。
完了したらペンでチェックを入れて、その紙をファイリングして管理、という一連の流れを、全てデータ上での処理に置き換えたんです。

製造現場にはもちろん高齢の方も、PCに慣れていない方もいます。新しいやり方への拒否感はもちろんありました。今までのやり方を変えるのはストレスのかかることですよね。
そこは十分に理解した上で、導入前には打ち合わせや丁寧な説明を繰り返して、問題点を潰していく作業をとことんやりました。現場の不安を取り除くのも、社内SEの大きな仕事だと思っています。

製造現場は「経験の世界」。そこにシステムの精度を組み合わせることでミス削減に成功。

工程管理のデータ化に加え、色柄センサーと自社システムを組み合わせ、目視で行っていた検査を自動化しました。センサーは市販のものを使っており、コードサンプルは公開されているので、それを社内SEがアレンジしていきます。
プログラムの改修や要望への対応がスピーディにできるのが社内SEの強み。製造現場の実態が分かっていることで、よりニーズにあったアレンジが可能です。

導入は、クレームが出やすいところ、ヒューマンエラーが出やすいところから進めていきました。
熟練の方ほど、図面や指示書を読み込まなくても経験則でできてしまうので、ミスがとても少ない反面、たまに出るミスが思い込みによるものということが多いのです。ひとりにつき年1回のミスでも、オペレータの人数が多いと全体で見れば毎月ミスが出ることになります。
システムを入れて、検査のタイミングで機械的に一度止めることで、クレーム対策に繋がっています。

ユーザーの利便性を最優先にする。受託開発ではそれがなかなかできませんでした。

システムを含む設備の導入検討は、製造の統括責任者と各課の課長、現場責任者によって行われます。
部材の投入箇所、ラインの中央部、出口など、どのポイントにセンサーやPCを配置し、どんな検査をするのかなどを決めているのは社内SEです。生産性を高めると同時に、製造現場で働くスタッフ全員が便利に使えるようにするには、どうすればいいのかを考えます。

現在の社内SEは4名。ソフト開発をしていた元SEなど、経歴はさまざまです。
私自身も元SEで、前職では受託開発をしていました。やりがいはありましたが、受託開発だと導入後の様子や実際に使っている人の生の声を聞くことが少なく、数年後に機会があって尋ねてみると「もう使っていない」という悲しい回答をもらうこともあって、会社や業務の変化に応じてシステムも変えていける社内SEの環境を魅力的に感じていました。

外注としての立場では、決められた工数と予算の中で収める必要があり、「ユーザーにとってはこちらがいい」と分かっていても選べないこともあります。その点で言えば今は、やりたいようにできていると思います。

入社して製造統括部長に言われたのは、「お金を生んでいるのは生産現場。生産現場がやりやすいようにしてほしい」ということ。ソフトウェア会社では、自分の作業がお金を生んでいたのですが、今度はそうではない。
考え方が全く違うのだと、その言葉がとても印象的でした。

自分が迷ったときにはその言葉を思い出し、ユーザーにとってより良いと思う方を選ぶようにしています。技術的なことを考えるとこちらの方が作りやすい、ということもありますが、楽な方に流されないことが大事だと考えています。

IT化の推進は徐々に行っていますが、まだまだ遅れているため、効率化の改善などについては余白があり、提案が上に通りやすい環境です。一緒にやってくれる社内SEは随時募集しています。

コロナ禍で停滞していた海外展開が再開。より効率的な生産現場を武器にしたい。

少子高齢化の影響で住宅需要はシュリンクしていくことを見越し、経済発展が目覚ましいベトナムへの海外事業展開を行っていましたが、やはりここ2~3年はコロナの影響で営業活動が停滞していました。
代理店を介したオンライン営業などがメインでしたが、夏ごろから徐々に直接の往来が再開しています。今後拡大し、一つの柱にしていきたいと考えていますので、そのためにも生産体制の強化は重要なポイントです。

今までのやり方に固執せず、かといって急な変革によって人を振り落とすことがないよう、自社の性格にあったシステム化を、これからも進めていきたいと思っています。

会社概要

設立
2009年(創業:1921年)
資本金
4,500万円
売上
51億7,300万円(2020年3月期)
従業員数
215名
事業概要
木質系住宅内装部材の製造
住所
徳島県徳島市津田海岸町4番59号
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