スタッフコラム

答えにくい面接での質問を、ポジティブな印象の回答にする「親近効果」とは

面接では、自分の良さを知ってもらうことも大切ですが、出来ないこと、苦手なことも共有し、理解してもらうことも大切です。しかし、出来ないことを知られるのは、悪い評価につながってしまうのではないかという不安をお感じになると思います。

今回はそのような不安や疑問に答えられる心理学をご紹介したいと思います。

答えにくい面接での質問

たとえば、こんな質問をされると、とても答えにくく、正直に話しても良いのか、迷ってしまいますよね。

 経験がないことについて、「○○の経験はありますか?」と尋ねられた。
 経験がないことを言ってよいの?

 前職に不満があって退職した。
 退職理由を聞かれたときに、どこまでホンネで話しても良いのか分からない。

 自分の短所を教えてください、と質問された。
 本当にヤバい短所っていってよいもの?

面接の場では、自分のアピールができることばかりではなく、自分のネガティブな側面が見えるような話をしなければならないシーンに出くわすことがあります。

ネガティブな質問へのNG回答とは

自分自身のネガティブな情報をどのように説明すればよいでしょうか?

たとえば、「○○の経験はありますか?」と聞かれ、その経験がなかった時の回答で考えてみましょう。

一番良くないのは「やったことがあります」という回答です。
「やったことがあります」というのは事実に反することですので、明らかな嘘になってしまいます。嘘だと後に判明すると信頼を完全に失ってしまい、会社での居場所がなくなってしまうことにもつながります。

次に良くないことは、「はぐらかす」ことです。
たとえば、「たぶんできると思います」という回答はどうでしょうか。一見前向きな回答に感じるかもしれません。

しかし、これは質問に対しての回答になっていません。

そもそもの質問である「経験がありますか?」という問いは「過去の事実」を確認するためのものです。それに対して「たぶんできる」というのは、「将来の予測」になります。

質問されたことへの回答をせず、自分にとってポジティブにとらえてもらえそうな回答をしています。手厳しい面接官であれば「話をはぐらかそうとしているかもしれないぞ」と不信感を持つかもしれません。

大切な面接での基本スタンス

面接を「だまし合い」と表現されていることを目にすることもありますが、それは間違っていると感じます。
面接では、正直であることはとても大切です。

それは、正直だということが伝わることで、信頼を得ることができるからです。

面接の場では、この人は職場の社員やクライアントと信頼関係を築ける人なのかどうか?ということを見ています。それは、仕事を一緒にする人が、何か困ったことがあった時に、嘘をついたり、はぐらかしたりする人であれば、大きなトラブルになるからです。

面接官は求職者が面接の場においても言いにくいことでも、正直に話していると感じることで、求職者を信頼します。面接官が信頼できる人材と判断することで、入社した際、既存の社員とうまく仕事をしてくれる、という評価につながり、内定へ近づくことができます。ですので、面接の場でも正直であるというスタンスを大切にして欲しいと思います。

また、入社後においても正直な自分を理解してもらえたほうが働きやすい状態を作ることができます。

悪気がなかったとしても、出来ないことを出来る、と伝えてしまい過大な評価を得て入社すると、大変な苦労をすることになります。出来ると言って入社したのに、できなかった場合、会社内での評価もさがります。
実際に、転職を繰り返す人の中には、面接での評価は高かったのに、その後、期待された仕事ができていないことで、会社にいづらくなり転職を繰り返す人もいます。

私たちが考える、転職成功とは、入社後も活躍できる職場を得ることだと考えています。
一時的な転職成功を目指すのではなく、自分自身も入社して良かった、会社にも入社してもらって良かったと思ってもらえるためにも、正直なスタンスを大切にして欲しいと思います。

印象をポジティブに変える「親近効果」

しかし、「正直者がバカをみる」にはならないか、という心配もあると思います。
そこで心理的なテクニック「親近効果」をご紹介しましょう。

親近効果とは、時間的に近接する発言、つまり後で発言したことの方が印象に残るという心理的な効果です。

例えば、道に迷いながらレストランにたどり着き、とてもおいしい料理を食べたとしましょう。
その時の発言として2つを読み比べて下さい。

A. 料理はとてもおいしかったね。でもこの店は本当に道が分かりにくいね。
B. 道はとても分かりにくかったね。でもこの店は本当に料理がおいしいね。

いかがでしょうか。ABは同じ単語を使って作った文章ですが印象が異なるのではないでしょうか。

Aだとネガティブに感じると思います。道が分かりにくく、せっかくの料理が台無しだという文脈になります。
Bだとこの店の料理はおいしかったので、苦労してきた甲斐があったねというポジティブなメッセージを感じます。

面接に「親近効果」を応用

このように時間的に近接する言葉の印象が強く残る効果である「親近効果」を、面接で使ってみるとどうなるでしょうか?

「○○の経験はありません。でも前々から興味を持っていた業務ですので、入社できれば頑張って勉強して習得したいと思います。また、先輩たちにも自分から質問をして教わりながら一生懸命習得したいと思います」

こう言われると、「経験がない」ことよりも「熱意をもっている」という印象の方が強く残ったと思います。

これを反対にしてしまうといかがでしょうか。

「そうですね。特に、ある○○業界にいると経験しているケースが多いようです。
実際に、私の勤めていた会社にいる人の多くは、その経験をしている人は多いのです。」
「実際に経験はあるのですか」
「近い経験はあります」
「経験はないということですか」
「ありません」

経験がないという回答にたどり着くまでに時間が掛かってしまうと、回りくどく分かりにくい、言い訳がましいと感じられます。結果、不誠実な回答をする人という印象を持たれてしまいます。

都合の悪いことは簡潔に、最初に説明し、その後、自分の伝えたいことや、挽回する内容を伝えると良いでしょう。

特に難しい、転職理由や短所の説明

転職理由や短所はより説明が難しい内容です。

転職理由の伝え方などの指南書を見ると、ネガティブなことは伝えないことが正解と書かれていることが多いようです。
しかし、「まったく嫌なことがなかったのに、なぜ辞めるのか?」と嘘をついているのではないか、と不信感を持たれてしまうこともあります。

そのため、辞める本当の理由も一定程度伝えても良いと思います。ただし、過度な前職批判は嫌がられます。
そして、ネガティブな理由があったとしても、前の会社には感謝をしていることを追加で伝えることで、良い印象で終わることが出来ます。

たとえば、このような回答はいかがでしょうか。
「前の会社ではいろいろありましたが、たくさんのスキルを身に着けさせて頂いたことに感謝しています。
また、先輩にも優しく指導頂いたことも感謝しています」

辞める理由も、感謝していることも真実ですので、嘘のない正直な人だという印象になるでしょう。

短所についても同様です。
面接の際に、短所を説明すると、長所の裏返しとしてアピールしてくる方も多くいます。

たとえば、
「短所は、せっかちなことです。ただ、決断が早く、てきぱき行動が出来ます」
と聞くとどうでしょう。一見、ポジティブな印象に感じるかもしれませんが、質問への回答をはぐらかしてしまっています。

短所をプラスに言い換えると、結局は長所の回答になってしまいます。
また、短所を聞く質問の意図は、短所を客観的にとらえているのか、そしてそれについて改善をしようと努力しているのかを知るためです。ですので、短所は短所と伝たえ、改善していることを伝えましょう。

「短所は、せっかちなことです。少し慌ててしまうことがあるので、早めに準備をしたり、一呼吸おいて仕事をするなどの工夫をして、ミスがないように気を付けるようにしています。ミスについては減ってきています」

いかがでしたか?短所を受け止め、改善策を伝えることでポジティブな印象に変わったのではないでしょうか。

ただ、もしあなたが退職するにしても「感謝」することが見当たらない、短所について改善していない、ということであれば、それはビジネスパーソンとして基本的なスタンスに問題があるかもしれません。

まずは、人からやってもらったことに気づき、人や環境に感謝することや短所を気づき改善することから始めてください。

書類選考では自己PRをしっかりと

それでは、書類選考ではどのようにすれば良いでしょうか。

自分のことに興味を持ってもらっていない場合には「初頭効果」の影響を強くうけます。
初頭効果とは、最初に与えられた情報が後の情報に影響を及ぼす現象を指します。
第一印象が強く残り、最初に受けた印象を持ち続けます。

そのため、書類では最初に良い印象に残ることきちんと書いておき、興味を引くことを意識するとよいでしょう。

【参考書籍】
佐藤 雅彦、菅 俊一、高橋 秀明「行動経済学まんが ヘンテコノミクス」

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