スタッフコラム

夢を追いかけると人生は失敗する?それとも成長する? ―「やりたいこと志向」の落とし穴にはまらないために―

夢を持つことは本当に素晴らしいことなのでしょうか?

転職の相談にのっていると、夢を追いかけたためにその後、苦労している人とたくさん出会います。例えば、ミュージシャンを目指していたので数年間仕事をしていなかった人。その後、20代後半で夢は諦めた代わりに、夢へのエネルギーを仕事へ注ぎこみ熱意をもって仕事をしています。しかし、数年の空白があるため実際のスキルを適正に評価してもらえないという人はかなりたくさんいます。起業した人、スポーツ選手を目指した人、資格試験を目指したけどうまくいかなかったという人も同様です。
「夢を見ること」はリスクが伴うというのが現実です。

もちろん、夢をもってその実現のために努力することは素晴らしいことだと思います。大成功したミュージシャンや経営者も、その多くは成功を夢見て努力を続けた結果だと思います。成功した場合は、とても大きなリターンがあります。時には社会全体が恩恵を受けることもあります。

「夢を見ること」がいいのか悪いのか、とても私に判断できることではありません。
しかし、リスクを減らしながら夢に近づくことはできます。

「夢を追いかける」ことはキャリアではどのような意味を持つのか?

「夢を追いかけること」は、①自分のやりたいことをとても重視する価値観を持っている、②そしてそれを仕事にしたいと考えているといえます。つまり「やりたいことを仕事にする」という就業意識であり、「やりたいこと志向」と呼ばれます。

「やりたいこと志向」そのものは問題ではありません。それが過度に強くなり、「やりたいことしかしない」という状態に陥ってしまうことが最も問題です。

関連して面白い調査があります。フリーターの意識調査では、悪いフリーターと良いフリーターをフリーター自身が識別していることが明らかになったそうです。その違いは、「やりたいこと」を持っているかどうかが基準になっていました。

悪いフリーター:やりたいことがなく、なんとなくフリーターをしている
良いフリーター:やりたいことがあり、それを実現するためにフリーターをしている

私も納得できます。ただし、見落としてはいけない心理があります。それは、「やりたいことがある」ことが、フリーターという状態を「良い」として正当化しているという構図です。

「やりたいことをやる」はずが、「やりたいこと以外しなくていい」にすり替わってしまう危険があるのです。さらに発展し「嫌なことはしなくていい」という自分勝手な思考になり癖づいてしまうことがあります。

<やりたいこと志向の落とし穴>

やりたいことを追いかける

やりたいこと以外はしないという思考に陥る

働かないことを正当化する

嫌なことはしなくていいという思考が癖になる

不安定な雇用が長期化し、技能習得の機会を失ってしまう

最悪の場合、一般社会との接点が少なくなる

このような状況になることが、非常に危険です。

では、「夢を追いかける」やりたいこと志向は悪いことなのでしょうか?
もちろん、やりたいこと志向は否定的な側面ばかりではなく、努力への原動力になります。
それでは「やりたいこと志向」をキャリアに活かすためにはどうすればよいでしょうか?

チェックポイント①:やりたいことの根底にある本質的な欲求を明確にする
たとえば、「ファッション・デザイナー」になりたい人は、その職業でなければならないのではなく、たとえば「オリジナルを創造する」という欲求が重要なのかもしれません。この場合、ファッション・デザイナーだけでなく、企画・開発職も選択肢になるかもしれません。本質的な欲求まで掘り下げて自覚することによって新しい選択肢が見えてくることがあります。

チェックポイント②:やりたいことを現実的に計画する
やりたいことが見えてきたら、現実的に計画して下さい。「現実的に」と言うところがポイントです。非現実的な計画では実現は遠のきます。
実現可能性を点検する視点として、「やりたいこと」だけではなく、「できること」と「すべきこと」に注目してください。

できること:夢を実現するだけのスキルや経験、知識があるか?自信を持っているか?
すべきこと:夢を実現できたきの役割や責任を理解しているか?それを実行するための準備ができているか?

不十分な点を発見し、今後どのように補っていくのかを考えて、現実的な計画を立てて下さい。
①②について考えながら、リスクを抑え、現実的に「やりたいこと」を追求してみてはいかがでしょうか?

やりたいことだけでは生きられない

 最後に。例え夢を実現できたとしても、やりたくない仕事をしなければならないことがあります。そのことは予め知っていなければなりません。職業や立場に関わらず、やりたくない仕事は絶対にあります。

しかし、そのやりたくない仕事を引き受けることが、誰かの助けになることもあわせて知っておいてください。自分の苦労した分、悩んだ分、それが同僚の仕事の助けになっているはずです。そして顧客の喜び、自分の向上や成長に繋がっています。

参考文献
職業相談場面におけるキャリア理論及びカウンセリング理論の活用・普及に関する文献調査(独立行政法人 労働政策研究・研修機構)
下村英雄(2009).キャリア教育の心理学―大人は、子どもと若者に何を伝えたいのか 東海教育研究所.
高橋浩(2012).キャリア発達とやりたいこと志向の関連について:やりたいこと志向の志向性とその質的差 日本産業カウンセリング学会第17 回大会発表論文集

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