コロナ禍になり、リモートワークという働き方が浸透しつつありますが、「フル(完全)リモートという働き方が、地方(徳島)の雇用に大きな影響を与えつつあり、そして、これからますますその影響が大きくなると感じます。 特に、働く選択肢が増えるいう意味では、人材にとってより大きなチャンスが生まれているように感じます。一方で、地方の企業にとっては、フルリモートでの働き方ができる県外企業と採用面での競争が生まれ、さらに雇用確保には工夫が必要になってくると感じます。 現状の把握や今後の制度づくりなどにもご参考にいただければと思います。
フル(完全)リモートによって、どのような選択肢が生まれたのか?
実際に、転職のご相談を受ける中でも、リモートワークという働き方によって、生まれた事例を紹介します。
・徳島へ転居後も、リモートワークとして前職企業での勤務が継続できるようになった
夫の転勤をきっかけに徳島への転居を予定することになった女性から転職のご相談がありました。お話を聞く限り、非常に優秀かつ仕事に対しての情熱を持ち、所属企業でもご活躍されていました。徳島への転居するため、転職しかないと思っていたようですが、会社との話し合いによって、リモートワークで勤務を継続できるようになりました。
・徳島へUターンをするが、県内企業以外のフルリモート企業の両方を検討する
徳島にUターンしたいとは思っているものの、徳島県内で勤務できる企業のみに固執せず、フルリモートで働ける企業も視野に入れて転職活動を行っている、というケースも増えてきました。
・徳島県内企業に勤務しているものの、転職先としてフルリモートの県外企業を検討
逆に徳島本社の会社で勤務しているものの、フルリモートで勤務できる県外本社の企業への転職を検討しているというお話も聞きます。
所属企業では、女性は男性並みの管理職の登用実績や機会がなく、業務内容や挑戦したい仕事やポジションに納得できないため、希望の条件やポジションや業務に挑戦できるフルリモート勤務ができる企業に挑戦したいとお考えになっているケースをお聞きすることが増えてきました。特に、お話を聞く限り、その会社にはなくてはならない仕事ぶりや特別な役割をこなしているように感じますが、それに見合った役職や待遇の保証がないことに不満を感じているようです。
リモートワークを希望する人材とは
上記の実例は、実は全て女性かつ優秀であることが共通点となります。
より女性がリモートワークを希望する理由としては、結婚によって、女性は配偶者に配慮した働き方が求められるケースが多いからです。実際、夫の転勤によって、妻の離職につながったケースは34.6%あります。
優秀な女性の離職を防ぎたい企業が、リモートを提案することで離職を防ぐこともできるようになってきました。これは、地方の企業も同様に優秀な人材を確保する手段として参考になるのではないでしょうか。
一方で、夫の転勤により離職し、新たな地域で再就職をした際、自分自身の希望に合致しない職場で働いているケースもあるようです。フルリモートで勤務できる条件の会社が増えることで、自分の希望に合致した仕事を探すことができる環境にもなってきました。
特に、私がお話を聞いた女性は優秀な方々だと感じていますが、「夫の転勤」が理由で離職した女性は、比較すると学歴水準も高いというデータも発見しました。また、フルリモートでも働けるというのは、管理を必要とせず、自立的に働けるスキルとマインドを持っていることなのではないかと思います。
もちろん、女性だけでなく男性も同様に家庭の事情などで徳島へUターンをする人材もフルリモートで、転職をせずに前職で働き続けるという選択肢もできました。徳島県内企業にとっては貴重なUターン人材を確保するチャンスが減ってしまうことにもつながります。
フルリモートを導入する企業の特徴
まだ比較的規模の小さいスタートアップ企業がフルリモートを導入しているケースが多いように感じます。また、優秀な人材を採用するためにフルリモートを導入することで地域に埋もれている優秀な人材を採用したいと大々的にアピールしている企業もあります。
大手求人サイト「リクナビNEXT」を調べたところ、906件/54369件(2022年2月23日時点)が、「フルリモート」というキーワードが入った求人となっていました。その他、求人サイトを比較しても大体同じくらいの比率になっているので、全体の求人の中で、1.7%がフルリモートを導入している割合かと思います。比率としてはまだ低いと思いますが、コロナ禍でリモートワークが普及しだして2年と考えると、今後、フルリモート可の求人はますます増えていくのではないかと思います。
また、フルリモートからスタートした会社が、出勤できる場所を作るというケースもあるようです。徳島にサテライトオフィスを作りたいとのことで、フルリモート勤務も徳島拠点(仮)にも出勤できる形態を目指しています。
最後に
今後、地方企業がフルリモートを導入する企業との採用競争が生まれることは間違いないように感じます。
特に、優秀な女性で条件や待遇に満足していない方が、フルリモート勤務を導入する企業へと転職してしまうリスクが生まれているように感じます。ただ、働き方のバリエーションが増えることで、希望する働き方を手に入れる人材が増えることは素晴らしいことだとも思います。 また、逆に都市部の優秀な人材を副業のリモートワークで採用するという手法も定着しつつあり、地方の企業が優秀な人材を確保するチャンスも生まれています。 企業は、あらゆる手段で優秀な人材を確保し、成長をされることが使命です。
そのために、優秀な人材を確保するために、地方にオフィスを持つ利点とリモートワークで働くことができるという選択肢を持つことは必要不可欠になってくると感じます。
参照データ:夫の転勤による妻の無業化について 太田聰一 https://www.works-i.com/research/others/item/170313_jpsed_column13.pdf