スタッフコラム

やる気を奪う目標設定とは?「フロー現象」を引きだす3要件

あなたは、仕事をしている時に、どのように時が過ぎていますか?

「時間がなかなか過ぎず、終業時間が気になり、時計を何度も見てしまう」
このように仕事に集中できていないようなときは、モチベーションも低く、ミスなども起こりやすい状態です。
何より自分自身も仕事に取り組んでいて楽しいと感じることはできません。

「時間があっという間に過ぎ去り、定時になったことにさえ気づかない」
このように、時を忘れるくらい、完全に集中して仕事に取り組むことができれば、仕事での成果もあがり、なんとも言えない達成感を感じることができます。仕事が終わった後も、心地よい疲労感と充実感を味わうことができ、それはとても幸福な状態ともいえるでしょう。

心理学では、後者のような状態になる現象のことを「フロー」と呼びます。「フロー」と名付けられたのは、「よどみなく流れる水の中にいるようだ」と水の流れに例えて表現する人が多いからです。

フロー現象は、スポーツなどで特に感じやすいようです。体力的にキツイはずなのにそのことを意識することもなく、自分のプレーに集中し、時間を経つのを忘れてプレーを続けていた、という経験があるのではないでしょうか。
また、スポーツ以外でも、ゲーム、読書、登山、ダンス、絵画など、自分の趣味、つまりレジャーでも、その感覚を得やすいようです。

フローの発生条件

それでは、その「フロー」の出現をコントロールすることができるでしょうか?
3つの条件がそろった時に、フロー現象が発生すると言われています。

明確な目標があり、しなければならないことがはっきりしている
スキルとチャレンジのバランスがとれている
迅速なフィードバックがある

この3つの条件がそろった時、人間は集中し、自分の全力を発揮することができます。
それでは、詳しい解説を進めます。

明確な目標があり、しなければならないことがはっきりしている

明確な目標がなく、自分のやるべきことがよく分からない状態だと頑張りようがないので、集中は拡散していきます。

スキルとチャレンジのバランスがとれている

「スキルとチャレンジのバランス」が取れていることはとても大切です。
目標が高すぎると、やる気は不安に変わります。徐々に心配に移行し、最後は諦めて無気力となります。

反対に目標が低すぎると、第一段階はコントロール状態となり、更に低いと、くつろいだ状態になり、さらに低いと退屈を感じるようになり、最後はやはり無気力となってしまいます。

目標に対してスキルが絶妙なバランスで設定されている「自分の力を発揮できれば達成できるというイメージは持てるが、大きな不安までは感じないというチャレンジ」でフローは発生します。

迅速なフィードバックがある

レスポンスが遅いことでモチベーションが下がっていくという経験は、プライベートや仕事でも経験があるのではないでしょうか。興味がある人へメールを送ってもレスポンスが遅いと、その人への興味を徐々に失っていきます。

転職活動では、興味のあった企業でも、選考結果の連絡がないと徐々に興味を失っていきます。
レスポンスが早いと、興味のなかった企業でも興味を持つことがあります。

また、多くのスポーツは、迅速なフィードバックがあることからフロー現象が発生しやすいと言われています。
自分のプレーでポイントが入った、チャンスを作ったなど、プレーの直後に結果を確認できるからです。

フロー現象を作り、仕事で高い集中力を発揮するためには?!

フロー現象について理解いただけたと思いますが、それでは、仕事で高い集中力を発揮するために、意識的にフロー現象をつくるための具体的な方法をご提案できればと思います。

繰り返しになりますが、以下の3要件を満たすことでフローを生み出します。

明確な目標があり、しなければならないことがはっきりしている
スキルとチャレンジのバランスがとれている
迅速なフィードバックがある

会社がフロー現象を発生するように会社が目標設定や迅速なフィードバックを行ってくれれば良いのですが、会社がその3要件を用意してくれるわけではありませんので、自分でこの3要件がそろうように、設定する必要があります。

通常、仕事では、会社の要求が高くなり、スキル以上のチャレンジを求められること多いのではないでしょうか。

例えば、営業職だと目標は明確であることが多いでしょうし、お客様の反応が分かるのでフィードバックも迅速です。しかし、時に高すぎる目標が設定されていることがあるかもしれません。技術職や専門職も、社内の要求やお客様の依頼があまりにも無茶なことがあると思います。

高い目標設定に対して、不安や無気力に陥ってしまわないために、目標を自分自身で再設定することも大切です。
例えば、大きな目標であっても、プロセスごとの目標にし、行動目標を細分化し、今日一日の行動だけに集中するなど、自分が達成できる目標設定すると良いでしょう。

また会社で定められた目標を達成できるようにするために、自分自身のスキルを向上させることも大切です。
自分の力以上の目標を設定されていることが多いので、スキルの向上がなければ、会社の目標が高すぎると感じ、やる気を失ってしまうかもしれません。仕事を楽しむためには、スキル向上は欠かせません。

フロー研究の第一人者であるチクセントミハイ氏は、「何をするかよりも、仕事と向き合う中でどのような体験を引き出すか」が重要だと言います。

つまり、自分のやりたい仕事だから、楽しい仕事だから、やる気が出る、楽しく感じるのではないということです。
没頭できる仕事にするよう、自分自身が仕組みや目標設定を作ること。フロー現象を引き出すような自らの創意工夫が大切だ、ということだと思います。

また、経営者やマネージメント層の方は、部下や社員にやる気なく仕事への充実感を感じていないようであれば、適切な目標設定が行われているのか、迅速なフィードバックが行われる仕組みが作られているのかを見直してみてもよいかもしれません。的確な目標設定は会社にとっても有益なことであり、生産性向上にもつながるのではないかと思います。

【参考書籍】
M.チクセントミハイ「フロー体験入門 楽しみと創造の心理学」2018年7月20日第8刷

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